二十四節季「啓蟄」の万葉集と和菓子

3月5日は二十四節季の啓蟄(けいちつ)

1.啓蟄
啓蟄の3月5日は冬至から測ると地球が75度公転した時点で春分ももうすぐ。西洋の占いでは「うお座」の後半に入ります。夜明けがどんどん早くなると実感できます。朝早くおきる人にはありがたいですね。暗いうちに布団を出るのはエネルギーが要りますから。啓蟄は「冬籠りの虫が這い出る」という意味で、河原や農地では春をここそこに感じます。

2.七十二候
二十四節季の各季節は15日間、それをさらに三つに割ったのが七十二候です。24x3=72ですね。これにはオリジナルの中国版と、調整を加えた日本版があります。

(1)日本版
・啓蟄第一候  蟄虫啓戸(すごもり むし と をひらく)
自宅付近でもハチはよく見かけます。鳥たちも活発なのであちこちにエサの虫が出始めているということです。

・啓蟄第二候 桃始笑(もも はじめて わらう)
3月10日ごろです。桃の節句は3月3日なのに花が間に合いませんね。

・啓蟄第三候 菜虫化蝶(なむし ちょう となる)
野原に花が咲き始めたら蝶の出番。頑張って受粉作業してくれないとお花さんたちが困ります。

(2)中国版
・啓蟄第一候 桃始華 (もも はじめて はなさく)
日本より桃の咲く時期が早いと認識されているんです

・啓蟄第二候 倉庚鳴(うぐいす なく)
中国では鶯が遅いのですね。奈良県では2月の中旬には鳴いています。以前住んでいた東京西新宿では高層ビル街の新宿中央公園でも鳴いていました。

・啓蟄第三候 鷹化為鳩(たか かして はと となす)
春分の直前ともなると春うらら。獰猛な鷹もぼーっとして鳩のようにおとなしくなるとか。そんな状態の鷹を一度見てみたいものです。

3.この頃の植物と万葉歌
(1)わらび
いわばしる
たるみのうえの
さわらびの
もえいずるはるに
なりにけるかも

志貴皇子
巻8-1418.

石走る 垂水の上の さ蕨の
萌え出づる春に なりにけるかも

岩の上を流れ落ちるの上に
さわらびが芽を出してきたよ。
そうそんな春になったんだね。

(2)もも
はるのその
くれないにほふ
もののはな
したてるみちに
いでたつおとめ

大伴家持
巻19-4139

春の園 紅にほふ桃の花
下照る道に 出で立つ乙女

春の園では桃の花がピンク色に美しく、
その樹のしたに照り輝いた道に娘子が立っているよ。

(3)さきくさ(沈丁花)
万葉集に歌われた「さきくさ」とは沈丁花だといいう説があります。

はるされば
まづさきくさの
さきくあらば
のちにもあはむ
なこひそわぎも

柿本人麻呂
巻10-1895

春されば、まづ三枝の、幸くあらば、
後にも逢はむ、な恋ひそ我妹

春になると 最初に咲くあの沈丁花にように
元気で暮らしていたら きっと会える
愛しい人よ そんなに思いつめないで

3.啓蟄の和菓子を作ってみました

この季節を和菓子で表すとどうなるのか、作ってみました。いつも朝にランニングしている曽我川の土手の春のイメージです。茶色の土の上には春の緑が覆いはじめ、あちこちに花も咲いています。土の部分は粒あんで、草の部分は枝豆をミキサーでつぶして、浅い黄色の花は甘栗を使いました。シリコンの型で作るのですが、エッジを立てるために甘栗の汁を最初に入れます。凝固剤は寒天を使います。
このお菓子「啓蟄」と抹茶を家の建物の外の日なたに持ち出し、お天気の青空を見上げながらいただきました。何だかとてもいいことが続くような気がしました。

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