奈良県発祥の日本文化 漆(ジャパン) の伝統

漆から学ぶこと

このプレゼンテーションは2020年1月15日(水)に奈良シニア大学橿原校の講義で使われたものです。画像の下のメモは大和まちなみ文化塾の追加解説です。

この講義は質疑応答を含めて約100分間のものでした。

柴田先生は昭和24年生まれです。

本朝事始の記載は「 ヤマトタケルが、宇陀の阿貴山で狩猟をしていた時、大きな猪に矢を射ましたが、止めを刺すことができませんでした。そこで近くにあった木を折ってその汁を矢の先に塗り込めて、再び射ると、見事に大猪を仕留めることができました。木汁で手が黒く染まったヤマトタケルは、部下の者に命じてその木汁を集めさせ、持っている物に塗ると、黒い光沢を放って美しく染まりました。」というものです。柴田先生は、「漆を毒として使ったのではなく、矢じりを固定する接着剤として使ったのだろう。」という見解を示されました

漆には接着剤効果があります。スズメバチの大きな巣がありますが、あれが家の軒などからぶら下がってるその取り付け部分は漆です。ハチでも漆を接着材として使っているのです。かつては街には漆の小売り屋さんがあり、普通の家庭の主婦が漆を買ってきて接着剤として使っていました。

10年から15,6年で漆の木は渓16-7cmにまで育ち樹液が採取できます。採った後は値を残して切ってしまいます。その切り株から「ひこばえ」という芽が出てきて、また10数年育てます。なるほど親の根を使わせてもらえれば水の吸い上げが楽でしょうね。

京都の漆屋(材料商)によると、かつては吉野漆というのがあり、最高級の品質だったそうです。

レアさんは日本の大学院に留学中のパリジェンヌで、毎日柴田先生の工房に通い、金継ぎを乾漆の技法を勉強しています。日本滞在は2019年9月から2020年3末までです。次の画像からはレアさんが習っている金継ぎ等の作業の説明になります。

割れた陶磁器を準備します。何もない場合には、稽古のために100円ショップから買ってきた器をわざと割って教材にすることもあります。

のり漆を作るには、まず炊立ての米粒をへらでよく練って漆をたらし、さらに練ります。これを割れた陶磁器の断面に塗って接着します。

上の写真で手が写っているのがレアさんです。左利きなので柴田先生が左利き用の作業ヘラを削ってあげています。

接着した陶磁器は「室/ムロ」にいれて10日ほど乾かします。簡易なのものであれば段ボールの箱に濡れタオルを敷いたのものを使います。漆の成分であるウルシオールはは空気中の酸素と反応して硬化する働きがあります。

接着した陶磁器の割れた部分の段差や欠けを「砥の粉」を漆で練った錆漆というペーストで埋めます。

下地が乾いたらカッターナイフで余分な錆漆をはつり落とします。 柴田先生の教室では刃が薙刀のように丸く反ったカッターナイフがあり、使いやすいです。

さらに漆で中塗りをします。

いよいよ金粉。銀粉の下地となる上塗り作業です。赤い塗料の入った漆を使います。

乾いていない上塗り漆に金粉か銀粉を蒔きます。筆を使い、左右から金粉を漆に寄せて行き、筆先が直接生漆に触らないようにするのがコツです。

金粉、銀粉は1粒1粒が顕微鏡で見るとボールの形になっています。だからやたら効果だそうです。小さな小さなボールの下版分は漆に埋まっており、上に出た部分をトクサで磨いて最大直径の部分が出るようにします。さらに漆を塗って金粉、銀粉を定着させます。

フランスで金継ぎのプロを目指すなら稽古中でも客を取りなさい、と柴田先生はレアさんに依頼主を見つけてきてお金をもらう仕事をさせます。プロになる第一歩を京都で踏み出すことは大きな意義があるでしょう。レアさん嬉しそうです。

レアさんは金継ぎともう一つ乾漆の修行をしています。これは材料。見ての通りの西洋梨です。 ラ・フランスというのはフランスには無いのだとか。

乾漆の出来上がり。もう生のフルーツではなく漆器になっています。この色つやがずっと続きます。柴田先生は大振りの香合のつもりで指導しましたが、レアさんはフランスに持って帰ってチョコレートを入れるのだとか。

たくさんの質問が出ました。
(1)問:家にあるピアノや下駄箱が漆塗だと聞いているのですが本当でしょうか?
   答:モノを見なければわかりませんが、かつては大型の家具も漆塗りで作っていた
     ようです。現在は別の方法の塗装であることがほとんどです。
(2)問:うちに根来塗の赤いお盆があります。講義の中でも上塗りの漆が赤い色をして
     ましたが、あの色はどうやって出すのですか?
   答:今では水銀を使っています。それ以外にも安い材料はあります。かつてはカド
     ミウムも使っていたそうっですが、今は禁止されています。赤い色にもいろい
     ろな段階があり、その色を出すための方法が違ってきます。
(3)問:吉野に上質な漆があるとのことですが、ヤマトタケルと関係はあるのでしょう
     か? また漆で村おこしをしているところはどこですか?
   答:ヤマトタケルの漆の物語は宇陀の 阿貴山 とされており、吉野の漆との関係は
     不明です。また漆部造(ぬるべのみやつこ)が置かれたのは曽爾村の 塩井地
     区 というところで、漆の木を植えて 「ぬるべの郷(さと)」 をテーマに村おこ
     しをされています。

大和まちなみ文化塾では柴田先生の金継ぎ教室を実施しています。
場 所: 橿原市今井町の古民家を改装した「今井にぎわい邸」
開催日: 毎月第1第3土曜日の朝10時からです。
申込み: 下の案内にある連絡先まで

訂正:授業は12時ごろに終了で、その後抹茶かコーヒーを差し上げて歓談。13時には片付けて退出です。

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