日本酒飲み比べ奈良「書架」で日本酒教室

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2020年から飲食店「書架」さまとの連携での日本酒教室を始めました。奈良の観光にもおすすめの体験イベントです。複合飲食施設「書架」の場所は東大寺大仏殿の南大門の近く、というより奈良国立博物館のバス停前といったほうがいいかも。「夢風ひろば」の一角です。

この日本酒教室は日本語、英語で開催します。そのうち中国語でもやりますよ。

初回に飲み比べた教材日本酒は次の四銘柄。
奈良今西清兵衛の 春鹿 超辛口
三輪今西酒造の 菩提酛 三諸杉
奈良豊澤酒造の 無上盃
吉野北岡本店の やたがらす たる樽

今回の教室で使った日本酒教材

まずは四銘柄の特徴を飲んでいただきながら軽く解説します。

まず最初の酒は春鹿の超辛口。特徴は日本酒度+12の切れの良さ。アルコール濃度は15%、酒造好適米の五百万石を4割削って精米歩合は60%。すっきり辛口に仕立てています。

生徒に配られる利き酒シート

教室の生徒は四銘柄の説明を聞いて試飲で味も確認しながら、自分の印象を利き酒シートにメモします。味覚を言葉で書き記すのはむつかしいのですが、ワインの評論家などは詩人のように味を語っていますから不可能ではないはず。

さて二番目の酒は菩提酛三諸杉。三輪の今西酒造さん、良い酒作りますね。菩提酛は菩提山正暦寺に室町時代から伝わる酛(酒母)の製法で、生きた乳酸菌を使います。そもそもこの正暦寺の僧坊酒が清酒の発祥といわれています。「火入れ」、「諸白」、「三段仕込み」などは今でも使われている醸造技術です。

例えば「火入れ」は酒に熱を加えることで発酵を止め、雑菌を抑える技術です。西洋人でこの 低温殺菌法(pasteurization) 見つけたのはかの有名なパスツールで1862年のことでした。でも日本人はそんなことパスツールが生まれる何百年も前から知ってたのね。これって凄くないですか?

この日本酒、菩提酛三諸杉の特徴は何といっても乳酸菌由来の酸味。 酸度でいうと他の銘柄は1.2~1.6なのに、菩提酛三諸杉は2.7。独特の酸味とお屠蘇のような不思議な香りが特徴です。アルコール濃度は16.5%、日本酒度は-6ですが、甘さを感じさせないどっしりした感じ。微かに黄色く発色しています。原料米は奈良県のヒノヒカリ。食用米です。

豊澤酒造 無上盃のデータシート

さて三番目の銘柄は奈良豊澤酒造の無上盃。自信作なのでしょう。これ以上の酒は無い、から無上盃。酒造好適米の山田錦を四割削って、アルコール度数は15%。日本酒度はちょい辛目で酸度、アミノ酸度ともにバランスがよく、万人受けする造りと言えるかも。データでは日本酒度をのぞいて春鹿超辛口と似ています。利き酒には日本酒度の+3と+12の飲みわけが大切です。私には味はほぼ同じだけど無上盃のほうが後味の消えが早く感じます。

生徒たちも自分のメモと直感を頼りに四銘柄のあてっこゲーム(ブラインド・テイスティング)を楽しみます。

銘柄のわかっているカップ4つと不明なカップ4つを扱います

さて最後の銘柄は吉野北岡本店のやたがらす純米酒「たる樽」。これもよくできたお酒で、原料米はキヌヒカリ。アルコール濃度(+2.5)、日本酒度、酸度、アミノ酸度、精米歩合(68%)のすべてを控え目にしています。何のために? それは杉の香りを引き立たせるため。この一点です。やたがらすの樽酒は私の好きな酒で、「死んだらお墓にこれを供えてね。」と言ってるくらいです。食べ物とのマッチングでいえば、データ上は薄味で油のないものが合うのですが、何の何の。杉の香りがくっきりしているので、シチューにも焼肉にも行けます。もちろん和食は言うことなし。

ワインの分類を参考にした教材四銘柄のタイプ・マッピング

お酒のタイプと食べ物の相性はむつかしいものがあり、データでプロットすれば上のグラフの様になるはずです。さらに料理との相性では下のグラフの様になるとされているのですが、そこは、縁は異なものオツなもの。私の感触ではやたがらすの樽酒は四つの領域すべてをカバーしていると思います。

日本酒のタイプに合わせた相性のよい料理チャート

生徒さんも議論に加わって、ああだこうだ言ううちに教室の終了時間が来てしまいました。

酒造好適米と精米歩合の解説

なお奈良国立博物館前の「書架」では歩道に面して大和茶の屋台「言の葉」、おでんの屋台「天の戸」があります。「天の戸」ではおでんばかりではなく、今回の教材四銘柄の立ち飲み,試飲ができます。お好み三銘柄の飲み比べセット(1,000円)がおすすめです。

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