大和まちなみ文化塾では年に4回東京の新宿御苑にある翔天亭で茶会を開きます。季節ごとにテーマは決めるのですが、この茶会の特徴は茶の湯を全く知らない人に解説すること。実際、3月の茶会でも120人のお客さまのうち外国人が半分以上。この人たちに客の作法を期待できるはずもなく、席主がお客さんと会話しながらその席の趣向や茶の湯のことを解説します。
茶のたしなむ人の中には、茶の湯を知らない人を見下すという、不思議な心理をお持ちの方がいらっしゃいますが、あれはいただけません。
修行すれば修行するほどお客を楽しませて満足してもらい、その対価を得る、という良い循環を作りたいものです。その点、外国人相手なら、「あなたこんなこと常識でしょう。知らないと恥ずかしいわよ。」という理屈は通用しないので、いい解説の勉強になります。
今回の茶会のお題は卒業の季節なので「それぞれの旅立ち」。お軸は私の好きな唐の詩人、王維の「元二の安西に使いするを送る」。この茶会は10人ずつ客を入れ替えての開催で、始めのあたりの回では私が日本語で漢詩を読みくだしていました。でもどこから来たのか、を尋ねてみるとかなりの中国人、台湾人、香港人が居ることが分かりました。
そこで中国からの人には中国式の発音で朗読をお願いしたところ、しびれるような美しさ。やはり漢詩を読んでもらうのは中国人に限ります。聞いている日本人、その他の国からのお客さんも興味深げでした。これってある意味、一座建立と言えるのかな。
掛軸の意味や、床の花の紅白椿のこと、お点前さんの日本帯の柄のこと、茶碗や茶杓のことを解説していくと、日本人はたいていおとなしく聞いているのですが、外国人からは質問が出ます。
・飲むときに何故茶碗をまわすのか?
・抹茶の成分は何か?
・紅茶と抹茶は同じ植物なのか?
・日本人は皆、自宅で抹茶を飲んでいるのか?
普段からお茶をやっている日本人だけの茶会とは質問が全然違いますが、客の質問に答えながら会を進めていくのは解説茶会の醍醐味でしょう。
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