茶会の主題・テーマへのこだわり

お茶会には主題があります。茶会に行くお客さんは主題テーマを見つけて、理解して、お道具などの構成を楽しみます。でもそのテーマは最初からアナウンスされているとは限りません。テーマを見つけるには床の間の掛軸が一番大きなヒント。掛軸にある語句から当日のお題を推定出来ます。あとは茶碗や茶入れの絵模様、茶道具の銘、お花やお菓子がテーマと関連していることがあるでしょう。昨年のクリスマス茶会では社中(茶会を開催するグループ)の女性の帯にサンタさんがトナカイのソリに乗って空を駆けている模様があって楽しくなりました。

お祝いの茶会ではおめでたい軸をかけ、おめでたい模様や銘の道具を使いますが、季節ごとの定例の茶会では特にテーマが無い場合もあるでしょう。そんな時は季節がテーマになります。季節に合った道具を組み、季節に合った着物を着て、主客ともども季節を喜び楽しむという趣向です。

大和まちなみ文化塾の茶会では徹底的にテーマにこだわります。例えば現在準備中の6月東京新宿御苑での茶会のテーマは「神武東遷」。新しい令和の元号が始まるにあたり、日本の国の始まりを考えてみようという趣向です。

前回の御苑茶会の様子

掛軸の「掩八紘而爲宇 はっこうをおおひていえとなす」というのは、神武天皇の建国の詔にある言葉で、短く言えば「八紘一宇」。 八紘とは世の中の隅々のこと。 この言葉は戦争中には「世界征服のスローガン」のように悪用されたという人がいます。でも本来は「どこの人間も皆家族のように仲良くしましょう」という意味です。 

茶道具はいつものように世界各国からのもので、隅々から集まった道具が翔天亭をいう一つのお家に集まった、すなわち八紘一宇というイメージです。ヤタガラスとか、魚のアユを「鮎」と書くのは神武天皇の故事から来ているとか、金のトンビとか、神武さんの奥さんゆかりの花は百合(狭井の花)だとか、奈良県の話題が満載です。

これらのトピックをどのように掛軸、茶道具、干菓子、生菓子に忍ばせてストーリーを語るのか、苦労しながら楽しんでいます。もしお客さんが「これはどういう意味?」とか、「どうしてこの花を選んだの?」などと聞いてくれれば大助かり。「それはね、、」と準備していた話をします。聞かれない場合には控え目に種明かしです。お道具拝見で最後に残ってくれたお客様には詳しく解説します。

新宿御苑では58haの広さの苑内に二つの茶室があります。

東京新宿御苑の茶会ではお客様の半分以上が外国人。少しでも多くの人に茶の湯を楽しみながら、日本の国と奈良県のことを知ってもらおうという試みです。

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